▲引退時の304F(2005.09.25 鵠沼)
1958年、100形106・109(1931年・新潟鉄工所製)を種車として東横車輛碑文谷工場で改造された。

原車の車体を多く流用した301〜303Fと異なり、本車では車体幅の拡大、張り上げ屋根化(屋根肩の雨樋は当時未設置、客扉上に水切り付)を伴う大改造を実施。側面も前位側客扉を後退させ、乗務員扉を設けたことで500形に近い見付となった(ただ乗務員扉はあるものの、車内仕切は当初従来車並みのHポールであった)。ライトも500形に準じたオデコ埋め込みの前照灯+角型尾灯となり、オデコが垂直に立ち上がったフォルムとされた。

側窓は種車譲りの下段上昇式2段窓でウィンドシル・ヘッダーは存置され、ベンチレータは当初T形4個×2列。

台車は当初、201+202から流用したブリルの鋳鋼製台車を改造(枕バネをコイルバネ+オイルダンパー化、コロ軸受化)して使用していた。カルダン化後は両端台車が極楽寺工場の仮台車として使われているほか、連接台車は米国ウェスタン・レールウェイ・ミュージアムに引き取られて保存されている。

この台車に装備されていた電動機は、他の連接車が30〜40kw台の出力であったなか56.0kwと強力で、300形随一の俊足であった。1990年代のカルダン化に際し、唯一電動機出力がダウンした編成でもある。

登場時から床下にジャンパー栓を装備したが、両前面とも向かって右側に取り付けられた。のち重連運転開始時には取付位置が変わるので、この配置で実際に使われることはなかったと思われる。

その後の変化は以下のようなもの。

1960年代前半
・方向板の横引き化
・1964年、ポールのZパンタ化(304のみ搭載・354は台座のみ存置)
1970年代
・重連運転に際する密自連化(上吊り式)・ジャンパー栓整備(他車と同じ様式に改造)
・1971〜73年頃、Zパンタのパンタグラフ化(354→304の順)
・雨樋・縦樋設置(1975年ごろまでに2輌とも設置。1971年には304のみに設置されたが、後のものとは縦樋の位置が異なる)
・同時期、ベンチレーターが角型となる
1980年ごろ
・前照灯シールドビーム2灯化(過渡期、旧前灯を非点灯で存置していた3灯時代あり)
・前面車号の腰板中央への移設
・車外スピーカ設置
・(少々遅れて)窓枠アルミサッシ化
・客扉交換(Hゴム支持窓)
・(遅れて)戸袋窓Hゴム化
1986年ごろ
・ウィンドウヘッダー消滅
・窓上塗り分け線変更(ドア上揃え→窓上にウィンドシル程度の幅を取る塗り分けへ)
1988年ごろ
・客扉窓を金属支持化
1989年
・列車無線アンテナ設置
1991年12月
・冷房化
・カルダン駆動化 台車は1500形をベースとしたTS-837(端台車)・TS-838(連接台車)
・内装工事
・客扉上の水切りが消滅
・乗務員扉上に水切りを設置
1994年
・連結器の密連+電連化
1998年ごろ
・機器更新(新型車との併結対応化)
2001年ごろ
・円筒形の避雷器を取付


2002年の開業100周年の折には茶+クリームのツートンに塗り替えられ「チョコ電」として運用、同年12月には標準色に戻す計画であったが、好評のためそのまま2005年8月まで「チョコ電」として走った。バレンタインデーが近くなると専用のヘッドマークを取り付けるなど、ユニークな試みも行われた。かつて同じく「チョコ電」として活躍した800形のように愛称名のヘッドマークを付けた時期もある。なお「チョコ電」時の茶色の色調は800形より暗めで、ドアはクリーム一色塗り、張り上げ屋根のため幕板も塗り分けている。幕板塗り分けは更新前の標準色に近いドア上辺揃えとされた。

人気車輌であったが、2005年、台枠の損傷が著しく引退が決定。これを受け、同年8月28日限りで「チョコ電」での運用を終了し、9月4日からは標準色に戻された(この際塗り分けは「チョコ電」塗色の塗り分け線に合わせてか、1986年以前と同じドア上揃えとされた)。その後約1ヶ月間の運用ののち、2005年9月30日をもって引退、廃車となり、これによって江ノ電で初めて冷房車の廃車が発生した。

廃車後は、304の前頭部カットモデルが極楽寺検車区に保管されている。

編成

藤沢 鎌倉
304F 304 354←304
1960改番

主要データ(特記なき限り編成全体の値)

製造所 東横車輛碑文谷工場(改造)
制御方式 抵抗制御(末期は弱め界磁付)
駆動方式 吊掛式→中空軸平行カルダン式(1991年改造)
主電動機 56.0kw×4(吊掛時代)
50.0kw×4(カルダン化後)
歯車比 3.37(吊掛時代)
6.31(カルダン化後)
ブレーキ方式 電磁SME→電気指令式(HRD-1D)発電ブレーキ付(1998年頃改造)
車体構造 半鋼製
最大寸法
(長×幅×高)
24,100×2,540×3,910mm(冷改後)
※冷改前全高3,790mm
自重 37.3t(冷改前)→41.0t(冷改後)
※冷改後20.7t(304)/20.3t(354)
定員(座席) 150人(60人)
改造年 昭和33年
在籍数 1編成(300形自体は最大6編成在籍)

備考的写真 クリックで拡大

1974 1977 1982 1985 199X 2001 2002
2002.07.14 2002.11.30 2005 2005.09.10 2005.09.25

Nゲージ模型製品
Masterpiece
江ノ電304F 原形タイプ(2002年)  真鍮製キット16,800円
原形とはいっても新製時の仕様ではなく、パンタ化後、前照灯1灯のタイプとしたもので縦樋の造作からすると時代設定は1970年代後半あたりか。動力込みのトータルキットで、別途購入品はパンタとカプラー、ベンチレーター程度。ハンダ付け組立が前提。
MODEMO(ハセガワ←長谷川製作所)
江ノ島電鉄 300形 "チョコ電塗装"  プラ製完成品10,290円
MODEMOの300形では最初の製品。当時活躍中だった「チョコ電」塗色の姿を再現したもので、タイムリーな製品化でもあり標準色に先駆けて発売された。M車のみ。
江ノ島電鉄 300形「304F」"標準塗装"  プラ製完成品5,880円
305F(M車)と同時に、対応するT車として発売されたもので、塗り分けは1980年代から2002年の「チョコ電」塗装化までのクリーム色の面積の狭いもの。塗色と動力の有無以外は「チョコ電」と同様で、そのため床下機器は更新後のタイプ。T車のみ。
江ノ島電鉄 300形「304F 1灯型」  プラ製完成品10,290円
Masterpiece製品と同じく1970年代後半ごろの姿としたもの。新性能仕様と共用できる部品は動力廻りぐらいで、ほぼ新規製作といえる。カプラーは密自連タイプを備えるが、連結器胴受は機能上、密連化後と同じ下支持式となる(他の密自連車も同じ)。ベンチレータは角型のものが付く。M車のみ。
江ノ島電鉄 300形「304F」"標準塗装2005"  プラ製完成品10,290円
引退前の約1ヶ月間だけ見られた、1980年代までの旧塗り分け線に戻された姿を再現した製品。同時に305Fも再発売されたが、ここでは304FがM車、305FがT車となった。
その他
バンダイ「Bトレインショーティー」シリーズで「チョコ電」が発売されている。ただし車体は305Fの製品をそのまま使っており、色変えで304Fのチョコ電塗色に見せたものである。

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