▲オリジナルカラーに復元されて運行中の1001F 開通110周年記念ステッカーを貼付した姿
(2012.06.24 七里ヶ浜〜稲村ヶ崎)
1979年、江ノ電では実に48年ぶりの完全新製車、また初めての全金属車として2編成(1001F、1002F)が製造された。なお、これ以降1502Fまでの車輌は1000形として一括りにする場合もあるが、製造年次によって仕様が異なり、番代も分けられているため、本サイトではそれぞれ頁を分けて掲載する。

外観はバランサー付の大きな窓(窓枠は樹脂製の成型品)、緑濃淡の明るい塗色によって従来の江ノ電のイメージを覆す斬新なものとなった。電動式の行先方向幕を採用したのも1000形が最初である。なお、幕は当初緑地に白文字であった(1200形までの各車も同様)。

車内も暖色系でまとめられ、赤色のシートモケット(優先席はグレー)を採用してイメージを一新した。電気指令式ブレーキ、応加重機構も初めて装備し、マスコンは右手操作のワンハンドル型となって運転台もすっきりとまとめられた。

台車は新設計のTS-819(端台車)及びTS-820(連接台車)で、以降の新製車・更新車の台車のベースとなったが、まだ短軸距の小型車では実績のなかったカルダン駆動は採用されず、吊掛駆動とされた。急カーブに備えた軸距短縮のため、モーターは車軸の外側に置かれている(固定軸距は1,600mm)。また当初は沿線の性格を考慮し「窓の開放による天然送風」が適しているとして冷房も設置されず、扇風機のみであった(このため当初は現在よりも窓の開閉域が広かった)。原形では屋上に角型のベンチレーターを1車体につき3個搭載し、換気に供していた。

連結器は密自連(NCB-2)だが胴受は下支持式の大柄なもので、連結器上に電連が付いた。このスタイルは1200形までの各編成にも踏襲されたが、のち後述のように変更を受けている。

側面には従来のイニシャル表記「EKS」(当時の社名「江ノ島鎌倉観光」の意)に代わって「江ノ電」ロゴの入ったプレートが付けられ、1001・1002Fでは乗務員扉直後の窓上に位置した。また車番は扉間、連接部寄りの腰板に付けられるのがオリジナルだが、広告貼付時に干渉するため、のち乗務員扉直後の腰板に統一されている。いずれも帯色と同じ濃緑地に、銀の切り抜き文字を配する。

細かいところでは、密連化以前の1000系列の前面裾には切り欠きがあったが、1001・1002Fのみこれが浅かった。

1980年度、鉄道友の会によるブルーリボン賞を受賞。なお設計にあたっては、前年に登場した京浜急行800形の影響が強く、窓枠や運転台のワンハンドルマスコンはほぼ同仕様とされている。

登場後の主な変化は以下の通り。

1980年代
・1980年ごろ? 1001F・1002Fとも前面切り欠きが両側の深い「凹」型になる
・1985年、1001F冷房化(扇風機は撤去)
・1986年、1002F冷房化(〃)
・1985年ごろ? 電連を廃止、1500形同様の上吊り式密自連+ジャンパ栓装備に変更
・1987年頃、前面切り欠きが元の通りに戻る
・1989年、列車無線アンテナ取付
1990年代
・方向幕交換(緑地白文字→黒地白文字)
・1993年ごろ、連結器の密連+電連化・前面裾の切り欠きの埋め込み(裾が一直線の現在の形態に)
・コンプレッサー交換(DH-25D→HB1200S)
・側面車番の移設(扉間連接部寄り→乗務員扉直後)
・1997年、1002F車体修繕・床をステンレス化
2000年〜
・2000年ごろ? 1001Fの冷房制御装置を10形以降採用のカマボコ型に交換
・2003年、更新工事開始。1001Fが先陣を切って更新される。主な内容は以下の通り
 ・車体外板の張替など、腐食・劣化した部分の交換
 ・補助電源装置をMG(TDK3510-A)からSIV(RG4032-A-M、20形と同型)へ変更
 ・ベンチレーターの撤去
 ・円筒型の避雷器取付
 ・シートのモケットを赤色から緑色+濃緑のストライプに変更
 ・ドアチャイム・自動放送装備(のち英語放送も追加)
 ・鎌倉寄り車の先頭部座席を片側撤去し車椅子スペース化、当該個所の側窓を固定化
・2004年12月、1002Fが同様に更新。同時に1000系列で初めて20形塗色を採用
・2005年、1002Fの冷房制御装置をカマボコ型に交換(過渡期に新旧併用あり)
・2006年4月1日より、1001Fが西岸良平氏のイラストによるラッピングカー「S.K.I.P号」(初代)
(S.K.I.P>>Shonan,Kamakura,Infomation,Promotionの意)として運用
・2007年、1001F・1002FともにN500形塗色へ変更
・2008年夏、1002Fの前面方向幕を英字入りのもの(2000形の黒地文字幕と同等品?)に交換
・2008年12月ごろ、1001Fの扉窓が金属支持式(1101Fと同様のもの)となる
・2009年5〜7月ごろ、両編成のクーラーキセをステンレス製(N500形と同型)に交換
・2009年9月ごろ、1002Fの扉窓が金属支持式となる
・2009年12月、1001Fが登場時の塗装に復元される
・2010年 優先席を紫色モケット+オレンジ吊革に変更

コンプレッサー交換やSIV化は後続車の仕様に合わせたものといえ、これ以外にもブレーキノッチの段数の変更(常用5段+非常1段→常用7段+非常1段)、座席の袖仕切り形状変更(逆台形→台形)・垂直方向の掴み棒の新設といった改造が施されている。

なお20形塗色・N500形塗色ともに車番の位置は従来のままで文字色も銀色だが、「江ノ電」ロゴプレートは撤去され、代わりに乗務員扉と直後の側窓の間に社紋入り円盤が貼り付けられた。20形ではその下に「ENODEN」の文字が配されるが、1000形にはこれは見られない。

編成

藤沢 鎌倉
1001F 1001 1051
1002F 1002 1052

各種データ(特記なき限り編成全体の数値)

製造所 東急車輛
制御方式 抵抗制御
駆動方式 吊掛式
主電動機 50kw×4
歯車比 5.27
ブレーキ方式 電気指令式(HRD-1)
車体構造 全鋼製(普通鋼)
最大寸法
(長×幅×高)
25,400×2,450×3,900mm(冷改後)
※冷改前全高3,575mm
自重 36.24t(冷改前)→39.3t(冷改後)
※冷改後19.8t(1000)/19.5t(1050)
定員(座席) 150人(69人)
※車椅子スペース設置前160人(72人)
製造年 昭和54年
在籍数 2編成

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 ディテール
2006.12.24 2009.07.25 2010.06.27 2008.11.23 2008.08.20 2006.07.23 2011.06.18
2011.06.18 2010.06.26 2006.07.23
 1001Fのいままで
1979.11 1982 2000.01.01 2001 2005.10.17 2006.03.12 2006.04.04
2008.08.20 2009.09.03 2009.12.12 2009.12.12 2010.02.08 2010.06.26 2011.06.18
 1002Fのいままで
2000.06.18 2003.02.16 2005.08.15 2006.01.04 2008.08.23 2010.07.04 2011.09.19
2012.06.24
 参考
2006.10.22

Nゲージ模型製品
MODEMO(ハセガワ←長谷川製作所)
江ノ島電鉄 1000形 "標準塗装"(2003年)  プラ製完成品 M車10,290円/T車5,880円
MODEMO最初の江ノ電連接車で、実車の腰の低さも良好に再現し、同社江ノ電シリーズ初の現役車でもあり人気を呼んだ製品。なお、連接車としては東急300系が先行して登場している。プロトタイプは2003年更新直前といったところで、ベンチレータを装備し避雷器は旧型、床下にはMGが表現される一方、屋上冷房電源はカマボコ型の新しいもの。動力機構上、妻板はほとんど省略されており、これは後続の各製品も同様。車番はインレタ式。
江ノ島電鉄 1000形 "20形塗装"(2006年)  プラ製完成品10,290円
2004年更新以降の20形塗色を再現した製品。基本的に従来品の色変えだが、更新直後の仕様ということか、冷房制御装置は角張った旧型のものが付いている。ベンチレータや避雷器、MGはそのままなので、当時の1002Fの姿とするには小加工を要する。緑の色合いはかなり淡めで、のち発売されたN500形とは異なっている。M車のみ。
江ノ島電鉄 1000形 "S・K・I・P号"(2007年)  プラ製完成品10,290円
2006年から2007年にかけてのラッピングカー仕様。これも更新後の時代設定だが、ラッピングがメインの製品ということもあってか、細部の仕様は変更されていない。冷房制御装置は標準色製品と同様のカマボコ型。M車のみ。
江ノ島電鉄 1000形 "デビュー時仕様"(2008年)  プラ製完成品10,290円
1979年新製当時の姿としたもの。非冷房・無線アンテナなしの屋上のほか、1100形以降より若干浅い前面の切り欠きも再現されている。車番はインレタ式で選択可能。M車のみ。
その他
バンダイ「Bトレインショーティー」シリーズで1000形標準色のショーティモデルが製品化されている。1000・1100形のほか角型ライト付前面で1200・1500形タイプにも化かすことができ、形態的にはドアのHゴム表現がないためむしろ1500形に近いものがある。

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