▲クーラーをCU77CEに換装した305F(2011.09.19 七里ヶ浜〜稲村ヶ崎)
1960年、東横車輛碑文谷工場で製作された。それまでの連接車は2車体とも同番号であったが、同年の運輸省通達により区分をすることとなり、当編成では初めて鎌倉方が+50として付番された(305+355)。

改造とはいうものの車体も台車も新造されており、流用部品は台枠のみ。これも江ノ電由来ではなく、京王帝都電鉄デハ2000形木造車(旧玉南電鉄1形)のものを使用した。車籍上は同車からの改造とされている。流用に際し、車幅を拡大したため車体が台枠より張り出しており、裾が高いプロポーションをしている(304Fも同様)。

車体は304Fに準じたフォルムながらノーシル・ノーヘッダーで、側窓はバス窓(上段Hゴム固定・下段上昇式)、窓寸法も大きく軽快な印象となった。304F同様、雨樋・縦樋は当初なく、当車に関しては扉上の水切りもなかった。ベンチレーターは非冷房時代はグロベン×3個。

当初ジャンパー栓・エアーホースを前面腰板に装備しており(両前面ともジャンパ栓が左、エアーホースが右で304Fと逆)、このためテールライト取付位置が高かった。この連結用装備も304Fのそれと同様、結局使われることはなかったと思われる。

台車は東急車輛で新製(TS-418・419)された。コイルバネを特殊なゴムで巻いた「エリゴバネ」を枕バネに使用し、形態も特異なものであった。

後年の改造は以下のようなもの。

1960年代
・方向板の横引き化
・1964年、ポールのZパンタ化(305のみ搭載・355は台座のみ存置)
・1960年代末、雨樋・縦樋設置(同時期に扉上の水切りも設置。1964年頃の記録では305にのみ付けられているのが確認できるが、縦樋が2本で後のものとは異なる)
1970年代
・重連対応のため密自連化(上吊り式)・ジャンパー栓整備(旧来のジャンパー栓受はパンタ化完了の頃まで残存)
・1971〜73年頃、Zパンタの菱形パンタグラフ化(355→305の順)
1980年代
・1980年、前照灯2灯化
・同時期、ドア交換(Hゴム支持窓)
・同時期、車外スピーカー設置
・1987年、客扉窓を金属支持化
・1989年、列車無線アンテナ設置
1990年代
・1990年更新:主な変更点は以下の通り
 ・旧型車で最初の新性能化:台車は1500形をベースとしたTS-837(端台車)・TS-838(連接台車)
 ・同じく旧型車初の冷房化
 ・内装更新
 ・客扉上の水切り撤去(乗務員扉上は存置)
 ・前面窓アルミサッシ化(?)
・1994年ごろ、連結器を密連+電連化
・1998年、機器更新による新型車との併結対応化(これも旧型車初)
2000年〜
・2001年ごろ、円筒形の避雷器を取付
・2003年、方向板大型化(502F最末期のものと同型)
・2010年 優先席を紫色モケット+オレンジ吊革に変更
・2011年7月上旬 クーラーをステンレスキセのCU77CEに交換

なおHゴムは当初すべて灰色だったが、1970年代中盤ごろまでにすべて黒色に交換されたらしい。一斉に交換されたわけではないようで、順序ははっきりしない。

1990年代まではたびたび広告塗装車になったが、そのほかの特別塗色としては1995年から翌年にかけ、昭和20年代の標準色を模した青+クリームの「青電」塗色で運用されたことがある。「青電」塗色は1980年代にも800形が映画撮影用に纏ったが、色調は305Fの方が淡い。

内装更新は行なわれたものの床板は未だに板張りのままであり、同じく板張りで残っていた500形なき今、江ノ電でも唯一の存在となった。

2007年に303Fが廃車されてからは、1000形以前の旧世代の車輌では最後の1編成となった。また江ノ電でツーハンドル式の運転台を持つのも本車が最後である。冷房車であり、性能も新型車に遜色なく共通運用で健闘している。

編成

藤沢 鎌倉
305F 305 355

主要データ(特記なき限り編成全体の値)

製造所 東横車輛碑文谷工場(改造)
制御方式 抵抗制御(現在は弱め界磁付)
駆動方式 吊掛式→中空軸平行カルダン式(1990年改造)
主電動機 48.5kw×4(吊掛時代)
50.0kw×4(カルダン化後)
歯車比 3.37(吊掛時代)
6.31(カルダン化後)
ブレーキ方式 電磁SME→電気指令式(HRD-1D)発電ブレーキ付(1998年改造)
車体構造 半鋼製
最大寸法
(長×幅×高)
24,100×2,500×3,910mm(冷改後)
※冷改前全高3,810mm
自重 37.8t(冷改前)→42.6t(冷改後)
※冷改後21.0t(305)/21.6t(355)
定員(座席) 150人(72人)
改造年 昭和35年
在籍数 1編成

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 ディテール
2005.12 2010.12.23 2010.12.26 2010.12.26 2011.06.18 2012.02.28 2012.04.07
 いままで
1982 1985 1989? 199X 1999 2001.10.14 2002.09
2010.07.04 2010.06.13 2011.06.18

Nゲージ模型製品
Masterpiece
江ノ電305F 2000年仕様(2000年)  真鍮製キット(現在絶版)
手作り品を除けば恐らくNゲージ最初の300形。当時の実車の仕様に合わせた新性能、冷房付の姿とされた。動力込みのトータルキットで、別途購入品はパンタとカプラー程度。ハンダ付け組立が前提。ナンバーとEER標記は、この製品に限ってエッチング表現である。
江ノ電305F 原形タイプ(2002年)  真鍮製キット17,800円
304Fの「原形タイプ」と同じく、パンタ化後、前照灯1灯の1973〜1980年ごろの姿としたもの。現行仕様製品のバリエーション展開といえ、キットの構成も同様である。
MODEMO(ハセガワ←長谷川製作所)
江ノ島電鉄 300形「305F」"標準塗装"  プラ製完成品 M車10,290円/T車5,880円
最初はM車が304F(T車)とともに発売、2008年にT車が登場した。Masterpiece製品と同じく現行仕様として新性能、冷房付、密連とされている。床下機器は更新後のタイプ。M車は標記類がインレタ式だったが、T車は印刷済に改められ、細部標記が追加された。
江ノ島電鉄 300形「305F 1灯型」  プラ製完成品10,290円
同社の「304F 1灯型」やMasterpieceの「原形タイプ」と同じ1970年代の姿がプロトタイプ。ここでもほとんどの部分が新規製作だが、なぜか前面窓は共用部品のアルミサッシとなっている(実車は新性能化ごろまで木枠)。M車のみ。
江ノ島電鉄 300形「305F 2灯型」"青電塗装"  プラ製完成品10,290円
"標準塗装"製品をもとに、1995〜96年の「青電」塗色としたもの。塗装以外の仕様に変化はない。M車のみ。
その他
バンダイ「Bトレインショーティー」シリーズにおいて、305Fのショーティモデルが製品化されている。同製品は2002年の開業100周年の折、500形とともにレギュラーシリーズに先駆けて発売され、江ノ電のプラ量産品はGMの1500形・600形、MODEMOの100形・600形しかなかった当時、ショーティとはいえ300形のプラ成型品ということで話題を攫った。当初はグッズショップ限定だったが、のち一般模型店へも流通するようになった。

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